
今、北海道士別市朝日町という町で住み込みで芝居を作っている。出演者は近隣の一般市民だ。近隣と言ってもみんな車で通ってくるのだが、近い人でも40キロほど先の町から来るそうだ。大阪とは距離の感覚がまるで違う。
「あ、彼女は隣り町から来るんですぐです」
「へぇ、何分くらいでくるの?」
「車で40分くらいですかね」
当初は頭の中で一度考えないと距離感がつかめなかった。石垣島の友達が私のSNSの投稿を読んで「40キロ先から人が来るんですか。ちなみに石垣の長さ37キロです」と書き込んでくれた。そうそう、その日はマイナス20度だったのだが、石垣島とは47度の寒暖差だったようだ。日本は縦に長いと実感した。
住まいは劇場さんが用意してくれた20坪くらいの一軒屋で、そのうち台所、4畳半と12畳くらいの部屋を使っている。お風呂やトイレのスペースは別なので、ひとりには十分すぎる空間だ。大阪から持ってきた暖簾やブランケットで仕切りを作って快適に過ごしている。
せっかくなので歩いて帰れる範囲に住んでるスタッフを招いてお好み焼きパーティやら、飲み会をしてたら「大阪の人って気さくだなぁ。今まで来た演出家はこんなことしませんでしたよ」と感激され、今では3日に一度は来るようになってしまった。ボトルキープしてるスタッフもいて「居酒屋わかぎ」と呼ばれている。
さて、この仕事「体験版 芝居であそびましょ♪」という市の企画で、毎年ひとりの演出家を呼んで、約二か月間ここに住んでもらって市民と芝居を作るという全国でも珍しいプロジェクトだ。もう20年も続いているらしい。
しかし今までは道内の演出家や、東京の人が来ていたらしく、関西人は私が初めてとか。「大阪人はみんな面白い話をするものだ」と思われているようで私が何か言うたびに「面白い!」を連発してくれる。おまけに衣裳にヒョウ柄の服が要るというので、先日劇団にもらったヒョウ柄のワンピースを寄付したのだが「大阪の人はやっぱり持ってるんだ」と全員が納得してしまい、何か間違ったイメージを残していくのではないかと不安が募っている。
その上、これまた小道具にいただいたヒョウ柄のトランクがあったので、ついでに送ったのだが宅配便のお兄さんが「この荷物、大阪からですか。さすがですねぇ」とニコニコして持ってきたらしい。あかん…勘違いされてる。
おまけに稽古期間に誕生日だったので友達が何かと送ってきてくれて「大阪の人は友達思いなんだ」「大阪の人は差し入れが好きなのね」と思われてしまったようだ。
芝居は人間の協調性を養うのに一番いいツールだが、このままだと「大阪人は家を居酒屋にして、友達が差し入れしてくれて、みんなヒョウ柄を着て面白いことを言う」と思われたままになりそうだ。それでも最近は純粋な北海道の田舎の人たちの嬉しそうな顔を見てると「そう思っててくれてもええか」という気にもなってきたが、間違った爪痕を残して行きそうだ。











